ESR

ここにきてこんなまとめが。

流れを追う上では全体的に良くまとまっている。しかし苦言を呈するところが一か所。
GIGAZINE の記事では、ESR について


また、Firefox10(現在のコードネーム「Aurora」)からは企業ユーザーなどが待望していた「拡張支援リリース(Extended Support Release)」となり、Firefox10から約1年間にわたってはこれまでのような異様な次々と打ち出されるバージョンアップによる新規機能追加が控えられ、一方でセキュリティアップデートがちゃんとリリースされ続けるという状態になるとのこと。

とあるけれども、この記述は必ずしも正確とは言えない。
Enterprise/Firefox/ExtendedSupport:Proposal - MozillaWiki に Extended Support Release(以下 ESR )の詳細が書いてあって、そこに載っているを見ればわかるけれども、あくまでも ESR は(法人をメインターゲットにした)別のリリースラインであって、現行の「 Rapid Release(高速リリース)」サイクルが変更になるというわけではない。感覚としては Ubuntu が2年おきに出す LTS に近いもの。なので、 Firefox 11 は Firefox 10 が出てからだいたい6週間くらいしたら新機能やアグレッシブな変更が追加されて出る予定だし、Firefox12 も然り。

この ESR のライフサイクルは、現在の案では Rapid Release の9サイクル分の予定(54週。ほぼ1年おき)。また、次のバージョンの ESR のリリースまでの間隔は Rapid Release の7サイクル(42週)になっていて、前の ESR と被る2サイクル(12周)は、次のバージョンへの移行期間として見做されている。なので、最初の ESR が Firefox 10 相当であった場合、次の ESR は Firefox 17 相当のものとなる。

ESR ではセキュリティアップデートなどに限り提供され、機能の追加や削除が行われることは無い。そのため各種 API が長期にわたって安定したバージョンになるため、アドオンで対応する最小バージョンとされることも考えられる。

また、ESR の開始に伴い Firefox 3.6 系はようやくサポートが終了となる。現在のところ、ESR は Firefox 10 から開始される予定であり、Firefox 3.6.x は 2012年の4月24日でようやく End of Life を迎える予定。2年間お疲れ様でしたと無事に言えるといいですね。

ちなみに、ここに書いたESRの話は、デスクトップ版のFirefoxの話。Firefox MobileにESRは適用されないし、Firefox同様に法人向けサポートが必要なThunderbirdは別の話になる*1

FirefoxのESRの更なる詳細については、上に挙げた Enterprise/Firefox/ExtendedSupport:Proposal - MozillaWiki を読むべし。

ここまで述べたように、ESR のメリットとしては長期にわたってセキュリティ修正のようなサポートが得られる点にある。
一方、現在の Rapid Release のメリットは、出来上がって載せられる機能から載せていくものなので、常に最新の成果が得られるという点にある。要は決められた周期でマイルストーンを出しているわけです。そのため、「Firefox ○○は劇的に××が変わる!」というのも目安・目標でしかなくて、たとえば、Firefox のメモリ消費を改善する MemShrink というプロジェクトは、出来上がったものが随時取り込まれている。
また、Rapid Release になってから、開発版、アルファ版、ベータ版、リリース版に相当する4つのラインそれぞれの品質が安定するようになっていて、リリース版はそれぞれの工程を経て安定性の面ではブラッシュアップされたうえでリリースされている*2
なので、個人ユーザーの場合は、余程の事情が無い限りは、通常のリリース版を使用していても特に問題はないと思うし、そちらの方がメリットも大きいと私は思う(そもそもESR自体が、長期サポートが必要な法人を対象としたリリース形態)。

以上、勝手に補足。